新型コロナウイルスによる肺炎の感染が広がっています。こうした中、感染から社員を守るため、また事業を継続するために企業はどのような対策を講じるべきでしょうか?対策のポイントをまとめました。
従業員の安全確保や事業継続のために会社としてできる備えを進めましょう。
企業が実施すべき対策のポイントは右のようなものがあります。順に説明します。
②事前対策
今後、流行ピークがやってくる可能性もあります。事業を継続するために危機管理対策が必要であると想定しておく必要があるでしょう。
◆BCP(事業継続計画)の策定
BCPとは、企業が大災害などの緊急事態において損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能にするために事前にしておく計画のことです。
◆備蓄の確保
マスクや消毒用アルコールなどの確保を考えられます。
③感染防止策の実施
リスクを減らすために適切な行動をとる必要があります。事業内容によりますが、例えば次のようなのぼが考えられます。
【例】
・手洗い
・マスク着用の徹底
・来訪者管理の徹底
・外出や対面の会議を避ける
来訪者にも入館時にアルコール消毒をおこなってもらうようアルコールポンプを備え付けている所も多いでしょう。
人が集まるイベントや会合を中止する企業も増えています。
また、リスクを減らしながら事業を継続するために働き方の工夫も必要でしょう。
【例】
・時差通勤の症例
・テレワーク・在宅勤務
・テレビ会議システムの利用など
イベントや会合よりも感染リスクが高いと言われているのが通勤ラッシュです。満員電車に乗らなくても済むように時差通勤を奨励するのも一つの方法でしょう。
東京都では数年前からオリンピック開催時の混雑緩和のためにテレワークを推進するよう企業に呼びかけてきました。近年ではテレワークの導入が広がりつつあり、今回の新型コロナウイルス対策においても全社的に在宅勤務を実施する企業が増えています。
新型コロナウイルスへの感染が疑われる場合の隔離期間は14日間、あるいは30日間とも報道されています。保育所や学校が休園・休校となれば、育児中の社員が出勤できなくなります。
通勤時の人ごみを避けて感染リスクを減らすため、また流行のピーク時に働ける人を少しでも確保するためにも、在宅勤務できる体制を整えておく必要があります。また、軽い咳や微熱程度なら我慢して出勤してしまう従業員もいるかもしれません。そのような場合そうするのか、同居している家族に発熱や咳などの症状が出ている場合どうするのかといったことも決めて周知しておく必要があるでしょう。
④融資などの情報収集
新型コロナウイルスの流行により観光業などはすでに大きな影響を受け、廃業に追い込まれるところもでているようです。
自社の事業がどの程度の影響を受ける可能性があるのか分析し、必要となる運転資金を把握する必要があります。
日本政策金融公庫や一部の自治体、金融機関では、新型コロナウイルスにより経営に影響をうけている企業への緊急融資を実施しています。こうした支援制度の情報収集もおこないましょう。
雇用調整助成金についても新型コロナウイルス対策として特例が設けられています。
新型コロナウイルスに「感染した」社員の出勤を禁じることはできる?その場合の賃金は?
新型コロナウイルスは指定感染症として定められました。そのため「感染が確認された」場合は、感染症法にもとづき都道府県知事が就業の制限や入院の勧告をおこなうことができます。
この場合、一般的には「使用者の責任に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられるため休業手当を支払う必要はありません。
なお、休業手当を支払う必要がないとされる場合においても、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合があるため、これを十分に検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くす必要があります。そうしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があり、休業手当の支払いが必要となることがあります。
新型コロナウイルスに「感染した疑いのある」社員の出勤を禁じることはできる?その場合の賃金は?
咳をしている、37.5度以上の発熱があるなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとることも可能です。ただし、このように使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあてはまり、休業手当を支払う必要があります。休業手当は1日につき平均賃金の6割以上です。
社員が発熱で自主的に休んでいる。休業手当の支払いは必要?
新型コロナウイルスかどうかわからない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に取り扱い、社内の病気休暇制度を活用することなあどが考えられます。「使用者の責に帰すべき事由による休業」でないため休業手当をしはらう義務はありません。
新型コロナウイルスに「感染した疑いのある」社員に、一律に年休を取得したこととする取扱は問題ない?
年次有給休暇は、原則として労働者の請求する時季にあたえなければならないものなので、使用者が一方的に取得させることはできません。
年次有給休暇とは別に、会社で任意に設けられた病気休暇により対応する場合は、就業規則などの規定に照らし取り扱うことになります。