働き方改革が進められるなか、柔軟な働き方の1つとしてテレワークを導入する企業が増えています。東京オリンピックの開会式がおこなわれる7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけ、交通混雑の緩和を図る取り組みなども広がっています。

今年2月、厚生労働省は「雇用型テレワーク」の適切な導入・実施に向けたガイドラインを策定しました。

適切な労働管理が普及のカギ

テレワークは企業と従業員の両方にとってさまざまなメリットがあります。しかし、会社以外の場所で働くため、仕事と仕事以外の切り分けが難しい、長時間労働になりやすいといった課題も指摘されており、適切な労務管理の実施は、テレワークの普及の前提となる重要な要素と言えるでしょう。

ガイドラインの変更点

テレワークについては2005年に策定された通称「在宅勤務ガイドライン」があります。今回新たに策定されたテレワークガイドラインでは、図1のような点が変更・追加されています。このうちいくつか具体的に紹介しましょう。

図1:主な変更・追加点

  • モバイル勤務の活用方法を追加
  • 労働時間の把握方法について具体化
  • 中抜け時間の扱い
  • 移動時間中のテレワークについて
  • 部分的にテレワークを行う際の移動時間の扱い
  • フレックスや裁量労働制をテレワークでも活用できることを明示
  • 時間外・休日労働の労働管理について具体化
  • 長時間労働防止のための手法

◆中抜け時間の扱い

在宅勤務では、労働者が業務から離れる時間が発生しがちです。いわゆる「中抜け時間」です。この「中抜け時間」について、使用者が業務の指示をしないこととし、労働者が労働から離れ、自由に利用することが保障されている場合は、休憩時間や時間単位年休として取り扱うことが可能と定められました。

◆移動時間中のテレワークについて

てれわーくが可能な環境が整っている場合、パソコンなどを使って通勤時間や出張旅行中の移動時間に業務を行うことも可能です。こうした移動時間中のテレワークについて、使用者の明示または黙示の指揮命令下でおこなわれるものは労働時間に該当することが示されました。

◆部分的にテレワークをおこなう際の移動時間の扱い

半日は会社、半日は自宅など、勤務時間の一部でテレワークをおこなう場合、就業場所時間の移動時間の取り扱いが問題となります。これについては、使用者の指揮命令下に置かれている時間であるかどうかによって図2のように労働時間に該当するかはんだんされるとしています。

◆長時間労働防止のための手法

テレワークでは、労働者が使用者と離れた場所で勤務するため、長時間労働を招く恐れがあることが指摘されています。そのためガイドラインでは、使用者は長時間労働による健康障害防止を図ることを求めています。 具体的な手法として図3のようなものが例示されています。

図2:部分的にテレワークを行う際の移動時間の扱い

使用者が移動することを労働者に命ずることなく、単に労働者自らの都合により就業場所間を移動し、その自由利用が保障されている時間
休憩時間として取り扱うことが可能

ただし、この場合でも、使用者の指示を受けてモバイル勤務等に従事した場合は、その時間は労働時間に該当



使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じており、その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間
労働時間に該当

図3:長時間労働防止のための手法(例)

①メール送付の抑制

役職者から時間外、休日または深夜におけるメールを送付することの自粛を命ずる

②システムへのアクセス制限

外部のパソコン等から深夜・休日はアクセスできないように設定すること

③テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止

業務の効率化やワークライフバランスの実現の観点から、時間外・休日・深夜労働を原則禁止とすることまたは使用者等による許可制とすること

④長時間労働等を行う労働者への注意喚起

長時間労働が生じるおそれのある労働者や、休日・深夜労働が生じた労働者に対して、労働時間の記録や、労働管理システムを活用して注意喚起をおこなうこと