政府は「働き方改革」の一環としてテレワークの普及を推進しています。現在、全雇用者の7.7%を占める雇用型テレワーカーを2020年までに倍増させるという目標です。自宅で働く「在宅勤務」もテレワークの一種です。近年、在宅勤務を導入する企業が増加し、関心が高まっています。しかし、労務管理をどうすればよいのか、どのようなIT機器が必要なのか、セキュリティ対策はどうすればよいのかなど、具体的な導入方法がわからないという企業も多いでしょう。ここでは、在宅勤務の導入手順や検討すべき点を開設しましょう。
在宅勤務は労働者にとって、➀静かな環境で集中できる ②通勤時間がなくなる分、家族と過ごす時間が増える ③育児・介護と仕事を両立できるなどのメリットがあります。

労働者だけでなく、企業にとっても次のようなメリットがあります。

①優秀な人材の確保や定着率の向上

柔軟な働き方を提供することで、人材の流出を防ぐことができるほか、優秀な人材が集まりやすくなります。

②電子化や業務改善の促進

在宅勤務の導入をきっかけに「資料の電子化」が一気に促進されることがあります。また、在宅でできる業務・できない業務を切り分けて見直す過程で業務改善につながります。

③非常時の事業継続

震災などでオフィスが被災したときや交通機関が麻痺したときでも事業を継続することができます。

導入プロセス

こうしたメリットがあることから、多くの企業が在宅勤務に関心を持っているものの、どのように導入すればよいかわからないという声もあります。

在宅勤務の導入にあたっては、ほとんどの企業がプロジェクトチームを作って図1のように進めていきます。経営層が全体方針を決定し、人事部がルールをづくりをシステム部がIT環境の構築を担当。 最初は特定の部署だけ、あるいは希望者だけで試験的に実施し、問題点を改善した後に全社的に本格導入するという流れです。 ただ、小規模な会社であれば最低限のルールだけで整備してトップダウンで実施することも可能でしょう。

ルールづくり

在宅勤務のルールを作るにあたって検討すべき点は、次のようなものです。

■対象者

育児や介護をしながら働く社員だけ対象にする。あるいは、新入社員や製造部門など自宅で一人で業務ができない社員以外は全員対象にするなど、対象者を決めます。育児・介護中の社員は毎日、その他の社員は月に数日だけ在宅勤務するという運用方法もあります。 対象を広げた方が、企業にとってのメリットはでやすいでしょう。

■労働時間の管理

上司の目が届かないため、始業時刻から就業時刻まで本当にきちんと働いているかわからないという不安から「みなし労働時間」にしたいとい考える企業も多いようです。条件を満たせば在宅勤務時に「事業場外みなし労働時間制」を適用することは可能です。 しかし、在宅勤務の場合、本人に労働時間管理を任せると長時間労働に陥りやすいことが指摘されています。労働者の健康面を考えると、始業時刻と就業時刻を守ってもらい、通常どおりの労働時間とした方が安全です。 メールや電話で始業・就業連絡を入れ、こまめに進捗状況を報告するようにすれば、十分に通常の労働時間管理が可能です。

■給与・評価

給与や評価は原則として変えるべきではないでしょう。通勤手当は在宅勤務の頻度によって定期・実費のどちらで支払うのか決めておきます。

■費用負担

労働者に作業用品等を負担させる場合は、就業規則にその旨を定めておかなければなりません。何をどちらが負担するのか明確なルールを作っておきましょう。例えば図2のようなものが考えられます。

■IT環境・セキュリティ

近年、IT技術の発展やクラウドの普及により、コストをかけずに導入できるものが増えています。 たとえば、ノートパソコンやタブレット端末にオフィスのパソコン画面を表示させて遠隔操作する「リモートデスクトップ」は安く導入できセキュリティ面でも安心です。

このほか、WEB上の「クラウド型アプリ」を利用する方法も低コストで導入できます。どの端末からでも同じ環境で作業ができ、クラウド上にデータを保存できるため、災害時にも役立ちます。 技術面で不安があるなら、個人情報や企業秘密を取り扱う業務は在宅勤務で行わなくても良いでしょう。